電気は止まった。冷蔵庫は、まだ冷たい。
でも、中の機械は動いていません。
冷蔵庫に残っている冷気は、扉を開けるたびに少しずつ逃げていきます。逃げた冷気を、家の中で元に戻すことはできません。
いまは、新しい保冷剤や電源を買う話はしません。
すでに家にある食品を、どう扱えばよいのか。停電したあとに、まず考えたいことをまとめます。
まだ冷たいことと、冷え続けることは別

停電したあと、冷蔵庫に触れると、まだ冷たいことがあります。
すると、「これなら大丈夫」と思うかもしれません。
でも、ここは分けて考えます。
- まだ冷たい…… 停電する前の冷気が、庫内に残っている
- 冷え続ける…… 電気が通り、冷蔵庫が中の温度を下げている
この2つは同じではありません。
台風のあと、家が残っていても、冷蔵庫が動いているとは限りません。部屋の明かりやスマホと同じように、冷蔵庫も電気が止まれば動かなくなります。
1本目で書いたとおり、家が残ることと、中の機械が動くことは別です。
外側が冷たいかどうかだけで決めず、まずは「いま、扉を開ける必要があるか」を考えます。
開けるたびに、残っている冷気が逃げる

停電したとき、ついやってしまうことがあります。
「中はまだ冷たいかな」と確かめる。飲み物だけ取り出す。家族が順番に中を見に行く。
でも、扉を開けると、外の空気が入ってきます。冷蔵庫の中の温度は少しずつ上がり、残っていた冷気も減っていきます。
1.中身を確かめるために開ける
「まだ大丈夫かな」と思っても、何度も開けて確かめるのはやめます。
扉を閉じたままにしておくことが、残っている冷気を守る方法です。
家族にも伝えておきます。子どもが中を見に行くこともあるので、「停電中は開けない」と、先に決めておくと安心です。
2.飲み物だけ取り出す
喉が渇くたびに冷蔵庫を開けると、その分だけ冷気が逃げます。
停電中は、冷蔵庫をいつもの飲み物置き場として使わないようにします。常温で置いてある水があれば、そちらを先に使います。
3.中に食べ物があるから大丈夫、と思う
冷蔵庫に食べ物が残っていても、安全に食べられるとは限りません。
肉、魚、牛乳、卵、作り置きのおかずなどは、温度が上がると傷みやすい食品です。
見た目がいつもどおりでも、においが変わっていなくても、安全とは言い切れません。味見をして確かめるのもやめましょう。
停電で適切な温度を保てなかった食品は、食中毒につながるおそれがあります。安全かどうか分からないものは、無理に食べないことが大切です。
時間の目安は、安全の保証ではない
冷蔵庫や冷凍庫は、扉を開けずにいれば、しばらく冷たさを保てることがあります。
農林水産省が案内している目安は、次のとおりです。
| 場所 | 扉を開けない場合の目安 |
|---|---|
| 冷蔵室 | およそ4時間 |
| 冷凍室 | およそ1〜2日 |
ただし、これは「この時間までは食べても安全」という意味ではありません。
外の気温、食品の量、扉を開けた回数などによって、冷たさが残る時間は変わります。
暑い日や、何度も扉を開けた場合は、もっと早く温度が上がることもあります。
数字だけを見て「まだ時間がある」と考えるのではなく、できるだけ扉を開けず、食品の安全を慎重に考えます。
守る順番(新しい道具は買わない)

停電したとき、まずやることは難しくありません。
1.扉に「開けない」と書く
停電に気づいたら、冷蔵庫の扉を閉めておきます。
紙があれば、「開けない。中を見ない」と書いて貼ります。家族にも伝えましょう。
特別な道具は必要ありません。家にある紙で十分です。
2.開ける前に、取り出すものを決める
どうしても開ける必要があるときは、先に何を取り出すか決めます。
扉の前で考え込まず、必要なものをまとめて取り出したら、すぐに閉めます。
ただし、傷みやすい食品を取り出せば、食べられるようになるわけではありません。
肉や魚、乳製品、卵、作り置きのおかずなどは、どのくらいの温度で、どれくらいの時間置かれていたかが大切です。
火が使える場合でも、傷んだ食品を加熱すれば安全になるとは限りません。
安全かどうか分からない食品は、食べないようにします。
火が使えないときは、無理に調理しようとせず、常温で保存できる食料を先に使います。
3.家にある保冷の箱は、開ける回数を減らすために使う
すでにクーラーボックスや保冷剤がある家では、必要に応じて使えます。
ただし、冷蔵庫から食品を移すために、扉を長い時間開けてしまっては意味がありません。何を移すか先に決めて、作業をまとめます。
保冷の箱も、何度も開ければ冷たさが逃げます。入れたあとは、できるだけ開けずに使います。
持っていない人が、あわてて買いに走る必要はありません。まずは冷蔵庫の扉を閉じて、残っている冷気を守ります。
4.冷凍室は、食品の状態をよく考える
冷凍室は、冷蔵室よりも長く冷たさが残ることがあります。
食品に氷の結晶が残っていて、まだ硬い場合は、凍った状態が保たれていることがあります。ただし、見た目だけで安全を決めることはできません。
すっかり溶けてしまった肉や魚などは、無理に使わないようにします。一度溶けた食品を、もう一度凍らせて保存するのも避けます。
「もったいない」と思っても、おなかをこわす危険を避けることが先です。
5.水につかった冷蔵庫は、電気が戻っても使わない
台風や洪水で冷蔵庫が水につかった場合は、注意が必要です。
外側が乾いて見えても、中に水や泥が残っていることがあります。そのまま電気を通すと、感電や火災につながるおそれがあります。
電気が戻っても、自分でスイッチを入れて確かめないでください。家電メーカーの相談窓口や電気の専門家に、安全を確認してもらってから使います。
食品をどうするかより先に、家族が事故にあわないことを考えます。
やってはいけないこと
停電したあと、次のことは避けましょう。
車から電気を取れるかどうかは、車の種類や装備によって違います。
水につかった車や、外に出せない車、通れなくなった道があるかもしれません。
1本目で書いたとおり、車だけを予備の電気として考えないことも大切です。
3日間の食事は、冷蔵庫の外にあるもの

農林水産省は、家庭の食品備蓄について、最低3日分、できれば1週間分を用意するよう案内しています。
ただし、これは冷蔵庫の中の食品が、その日数だけ安全に食べられるという意味ではありません。
停電が続くことを考えると、常温で保存できる食品も大切です。
- 缶詰
- レトルト食品
- 乾物
- 常温で保存できる水
こうした食品は、冷蔵庫が動かなくても、温度管理に頼らずに備えておけます。
| 守りたいもの | まずやること |
|---|---|
| 冷蔵庫の冷気 | 扉を開けず、確認しない |
| 傷みやすい食品 | 温度や時間を考え、安全が分からないものは食べない |
| 飲み水や食事 | 常温で保存できるものを先に使う |
| 水につかった冷蔵庫 | 電気が戻っても、すぐに通電しない |
停電が何日続くか、家族が何人いるか、火が使えるかによって、できることは変わります。
持病などで食事に注意が必要な人や、赤ちゃんのミルクが必要な家では、一般的な備えだけでは足りない場合があります。
冷蔵が必要な薬も含め、ふだん使っているものについて、かかりつけ医や製造元に確認しておきましょう。
参考情報
まとめ
停電のあと、冷蔵庫がまだ冷たいことと、冷え続けることは別です。
何度も扉を開けると、残っている冷気は逃げていきます。においや味見だけでは、食品が安全かどうかも分かりません。
まずは、扉を開けないこと。開ける必要があるなら、取り出すものを先に決めて、短い時間で済ませること。食事には、常温で保存できる食品も使います。
水につかった冷蔵庫は、電気が戻ってもすぐに使いません。
大きな電源で冷蔵庫を動かす話は、まだ考えなくて大丈夫です。
まずは、いま残っている冷気を、開ける前に守ることから始めます。
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